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処刑人 コナー×マーフィー 『正義は善なれど…:5』
一応折り畳んでいます。
長編ですが、今までのように甘くありません。
完全に自己満足で書いてます。
処刑人はカテゴリ分けしてます。











処刑人 コナマフ 『正義は善なれど…:5』






『コナー、聞いてくれ。死体安置所に保管されていたマーフィーの遺体が無くなった』


携帯電話越しでも判るほど、スメッカーの声が震えていた。
コナーが携帯を握っていた手を持ち替えながら、階段を登っていく。突き当たりには一枚の錆び付いた扉があり、そこを開けると、屋上が広がっていた。
マーフィーの思い出が笑いながら眼前を舞っていく。
片手で顔を抑え、大きな溜め息を吐き、空気を肺いっぱいに吸い込む。
『正確には、遺体が自分から出ていった…というのが正しいんだろうな』
コナーは相槌も打たず、屋上から下を見下ろした。
そこではロシアンマフィアに跪き頭を打ち抜かれようとするマーフィーの姿が見えた。
今コナーが立っている場所から、便器を投げ、自身も飛び下りた。
過去の残像だけが網膜に焼き付き、何度も何度も同じ箇所が脳内で再生され続けている。
『監視カメラに残っていた映像を見たが…』
最終的に辿り着く映像は…マーフィーが必ず最後には林檎を片手に市場の人込みに消える場面だ。
『…。何かのトリックだとは思うが…。お、落ち着いて聞いてくれ』
コナーは風に吹かれながら、ボストンの町を見下ろす。
『マーフィーが、自分から歩いて出ていった。…いや、何かのトリックだとは思うが、私には、そういう風にしか見えなかった。第一死体を盗む理由が判らない。一番最初に思い付いたのが、マーフィーは実は死んでなかったする説だ。だが、これもあり得ない。君たち親子が現場から去った後、私たち警察が乗り込んでマーフィーの死亡を確認している。そんなはずはない…』
見下ろしたそこから一人の男が入って来るのを確認して、コナーは踵を返し、部屋に戻った。




最初から妙だとは思ってたんだ。


マーフィーと全く同じ…なんて、あるわけねぇ。

それに気付くのに時間はかからなかったが、
出会った時は、本当に…それに『気付きたくなかった』ってだけだ。


結局、

忘れられねぇのも、
現実から目ぇ背けてたのも


俺だ。




マーフ。




お前は、




一人しかいねぇんだ。





俺が求めるお前は




たった一人しかいねぇんだよな。






コナーは銃口を入り口から入ってきた『マーフィー』に向けていた。
「てめぇと初めて会った時、俺の横をすれ違ったな?その時から、血の臭いがすんだよ。ずっとな」
「気のせいなんじゃねぇの?」
「気のせいなんかじゃねぇ!」
コナーは声を荒げ、銃の安全装置を外した。
「…なら聞くが、このビルに住んでた他の連中はどうした?てめぇがこのビルを買ったんだろ?どこにもいねぇっつーのは、どういうことだ?おかしいだろ?」
「……。」『マーフィー』そっくりな男は俯いた。
「どうした?言えよ」一歩一歩彼に近付いていく。
窓からは、夕焼けの真っ赤な光が部屋を照らし、二人の影を大きく描いた。描かれたそれは怪物のように手足が長く、奇形な形をつくり、一つにまとまっている。
『マーフィー』はゆっくりと顔をあげた。
微笑を深くし、真っ赤な光の中で上げていた両手をポケットに仕舞いこんだ。
「悪い奴らだったから、殺しちゃったよ。お兄ちゃん」
「何だと?」
『マーフィー』は肩を揺らしながらおかしそうに笑う。
「俺さ、あんたにバラすけど、神の啓示を受けたんだよ『悪なる者を滅ぼし善なる者を栄えさせよ』ってね。悪党を始末すんのが俺の仕事だ」
「!!」
「今流行ってる聖人だ」
コナーは首を横に振った。
「嘘吐くんじゃねぇ。このビルには不法占拠者ばっかだったが、俺たち兄弟はここを気に入ってたんだ。悪党なんていやしねぇ」
「そうかな?なんていうか…。あんたの言ってる悪党って意味がわからねぇよ。あんたはあんたの物差しでしか人をみちゃいなかったんだ。じゃ、あんたの物差しで計れない事はいったいどう処理すんのさ?」
コナーはふっ…と考えて「例えば?」と続きを促した。
「あんたとあんたの弟が働いてた精肉工場があるだろ?あんたたちの給料分牛や豚が殺されてるってことだろ?つまり、人間は生きてるだけで何かを犠牲にしてんだ。肉を食べるって行為だけで、この様だ。それに…だ。んな金があるなら、どっかの貧困ドン底の国に募金でもしてやりゃいいのに。それすら無視してビールを買う奴らがいる。こいつらはどうなんだ?みーんな、悪党じゃねぇのか?いくらあんたが綺麗事並べたてたとしても、無駄だろ?善人って、何だよ?悪党ってどういう基準だよ。人間が人間でいる限りは、あんたのいう悪党ってのはなくならねぇよ。何せ、人間って動物は生きてる限り、皆悪党じゃねぇか」
ゲラゲラ笑いながらしゃべり続ける『マーフィー』をコナーは五月蝿そうに目を細めて眺めて、大きな溜め息を吐いた。
「もう一度聞くが…。てめぇは何者だ?『マーフィー』の遺体を盗んだのもてめぇか?」
『マーフィー』の遺体を盗んだ『マーフィー』は笑顔を止めた。
「てめぇが何者かは知らねぇが、てめぇが『マーフィー』じゃねぇってことは判った。自慢じゃねぇが『マーフィー』はてめぇが言うような馬鹿な論理は言わねぇ。それ以上の馬鹿だからな。そこまで考えねぇ。あいつなら、こういうだろうな」
一度言葉を切った。改まった口調で言った。
「だから、罪を犯しても反省しねぇ罪人どもをぶっ殺せっていう啓示があったんだろうが。んなこともわかんねぇのかよ…ってな」
「…」『マーフィー』がポケットから出した手には、銃が握られていた。
「簡単な論理だ。人間云々なんて関係ねぇ。人間はいつか必ず死ぬ。死は平等だ。だが、それによって人間は罪を許されるってことだ。だから、死があるんだ。そんなことも判らねぇのか?」
地面に伸びる影が不気味に連なり、一定の形をとりはじめる。


ドクドクドク…
心音がやけに早い。



空が異様に早くすすみ、一日が1.5の早送り映像のようなスピードで瞬く間に過ぎていくような、奇妙な気配がした。
コナーはそれを視界の端で確認しながら、何かがゆっくりと歩みよってくる気配を感じた。それは大きくもあり、小さくもある。
ただ、記憶の中のマーフィーのそれではないことだけは確かだ。
今まで隠されていた『もの』が、その正体を現そうとしているように。
背中に悪寒が走る。知らず冷や汗が額を伝う。
「もう一度だけ尋ねる」
「…」
「てめぇは、何者だ?」
『マーフィー』の双眸が真っ赤に光った。
夕日が反射しているのかもしれない…。それとも目の錯覚か?
コナーは何度も瞬きしてそれを見つめたが、どちらも違うようだ。
「……。俺はあんたたち神の遣いを始末するために来た悪魔だよ。コナー・マクマナス」
「!!」
「この肉体は、あんたの弟のマーフィー・マクマナスの遺体だ」
「!!」
銃を握る手に汗がべっとりと滲んだ。
『マーフィー・マクマナスの遺体』を操る自称悪魔が持っていた銃をコナーに向けた。
「あんたに俺が撃てんのか?」
何かを叩き付けられたような強い衝撃があった。
「あんたを庇って死んだ弟を撃てんのか?」

『コナー!!』
マーフィーの絶叫が今も脳裏に鮮明に蘇る。

「撃てねぇくせに」

『コナー、好きだ』

「あんたもなんだかんだ自分に都合の良い言い訳してっけど、結局のところ、血を分けた双子の弟を愛してたんだよなぁ?」

『コナー、好きだ』
ドクドクドク…
心音がやけに早い。


「忘れろ…なんて、酷いよな。だって、本当は、忘れて欲しくなかったんだもんな。コナーは」



忘れて欲しくない?


忘れて欲しい?


『コナー、好きだ』
合わせた肌の感触さえも、まだ忘れられないのに。


「人間はどこまでも残酷になれるんだ」


『コナー、好きだ』
ドクドクドク…


「あんたさえ良ければ、このままあんたの『マーフィー』になってやるよ。いい考えだと思わねぇ?」


『コナー、好きだ』
『コナー、好きだ』
『コナー、好きだ』
『コナー、好きだ』
『コナー、好きだ』

「なぁ?コナー」

『コナー』

『マーフィーの遺体』がくすくす笑うと、持っていた銃の安全装置を解除した。
「あんたには無理そうだから、俺があんたを撃ってやるよ。そうすれば、あんたは俺のものになる。そしてあんたは永遠に『マーフィー』を手に入れることが出来る」

『コナー』

「悪魔は神様より優しいんだ」


続く≫

次回で最後です。



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